研究成果・プレスリリース
【プレスリリース】広帯域X線対応タイコグラフィ装置を開発 - ナノテラス活用で高精度な元素・構造分析を実現 -
本研究のポイント
- テンダーX線(注1)から硬X線(注1)までの広いエネルギー範囲に対応する高分解能X線タイコグラフィ(注2)計測システムを開発しました。
- NanoTerasu(ナノテラス)(注3)を活用し、試料の化学状態の可視化に成功しました。
概要
X線タイコグラフィは、非破壊かつ高解像度の観察が可能な手法として注目されていますが、同一の装置でテンダーX線から硬X線領域まで測定できるシステムはこれまで存在していませんでした。
東北大学 大学院工学研究科の佐々木雄平大学院生、東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センターの石黒志准教授、高橋幸生教授らの研究チームは、3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu」のビームラインBL10Uを活用し、テンダーX線から硬X線領域にわたる広帯域での高分解能X線タイコグラフィ装置の開発に成功しました。
本システムでは、NanoTerasuの高輝度かつ高コヒーレンスなX線に加え、色収差・コマ収差(注4)のない高効率な全反射集光光学系および、テンダーX線から硬X線まで対応可能な高速積分型X線画像検出器CITIUS(注5)を組み合わせることで、集光ビーム位置を変えることなくエネルギーを連続的に掃引しながら測定を実施することが可能となりました。これにより、従来困難であったテンダーX線と硬X線領域をまたいだX線タイコグラフィ測定を初めて実現しました。実証実験として硫酸カルシウム試料に対し元素吸収端近傍でのエネルギー走査を行い、ナノメートル(nm、1 nmは10億分の1 m)スケールでの構造と化学状態の同時可視化に成功しました。この成果は、電池材料、触媒材料をはじめとする高度な機能性材料のナノスケール解析と開発を加速するものとして期待されます。
本研究成果は、2025年11月7日に国際結晶学連合の学術誌IUCrJにオンライン掲載されました。
詳細な説明
- 研究の背景
- 今回の取り組み
本装置をNanoTerasuのビームラインBL10Uに設置し、テスト試料の測定を行ったところ、2.5 keVで38.7 nm、5.0 keVで13.4 nm、7.5keVで16.1 nmの分解能が得られました。また、硫酸カルシウム試料のカルシウムおよび硫黄のK吸収端付近でのナノメートルスケールでの像再生および数十nmスケールのX線吸収スペクトルの取得に成功しました(図2)。
- 今後の展開


(b,c) 硫酸カルシウム粒子の(b)カルシウムK吸収端および(c)硫黄K吸収端でのX線吸収像、位相像、位置1,2,3におけるX線吸収スペクトル。
謝辞
用語説明
論文情報
著者:Yuhei Sasaki*, Nozomu Ishiguro, Masaki Abe, Shuntaro Takazawa, Hideshi Uematsu, Naru Okawa, Fusae Kaneko and Yukio Takahashi*
*責任著者:東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター
大学院生 佐々木 雄平、教授 高橋 幸生
掲載誌:IUCrJ
問い合わせ先
【研究に関すること】
TEL: 022-217-5166
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp
お問い合わせ
東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター
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